借地人が破産した場合、地主はどのような対応をすべき?抵当権・競売など

地主が借地人と賃貸借契約を締結しているばあい、契約終了事由に該当する事態に遭遇したときには、借地借家法や旧借地法などの規制にしたがって処理することになります。終了することを前提にすると当事者の間で合意がえられているときは特に問題化することはありません。

借地人からの解約申し入れであれば、猶予期間の経過の有無が問題になるものの賃料の清算などで、速やかに処理することもさほど困難にはならないでしょう。問題になるのは、地主からの解約申し入れをするという状況での対処です。 借地人破産という信用状況が破綻した場面では、どのように対応するべきなのでしょうか。

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借地人が破産したら建物はどうなるの?

借地人が破産する事例は、信用能力が破綻したことを明白かつ客観的に露呈した状況にあることを意味します。破産手続開始決定をうけているような御仁と、賃貸借契約を締結するのはいかにもリスクが高く、できればかかわりをもちたくないというのが地主の心境ではないでしょうか。

しかし当初は経済面で問題がないと判断しても、その後の経済状況の辺境で債務超過に陥り、破産手続開始決定を受けるまでに至ることも珍しくはないはずです。この問題を検討するにあたっては、借地人がおかれている経済的状況を把握することは有益です。 借地人の中には事業活動を展開し、金融機関からの借り入れが存在することが想定されます。具体的には借地上に建物を建築し会社や事務所・テナントとして利用しているわけです。

事業活動を継続していくには現金が必須です。金銭消費貸借契約を金融機関との間で締結するには、担保を請求されることは珍しくありません。借地上の建物は担保物件としては、適正といえます。したがって金融機関では、借地上の建物を担保にして担保権を設定して、融資することになります。 ところで担保に差し入れた建物は、借地権を利用できる前提で担保能力は評価されているはずです。不法占拠している建物は、地主からの建物収去明け渡し請求の対象になるからです。つまり金融機関にとってみれば、借地上の建物は借地権と表裏一体のものとして評価しているといます。

この点は民法上でも、抵当権である担保権に代表される権利は、対象物に随伴する権利をもあわせて把握すると考えられてきました。 仮に借地人が債務超過など経済的信用破綻状況に直面した場合、金融機関としては可能な限り融資債権の回収に奔走することになります。破産開始にさきだって毎月のローン支払い延滞などの状況に直面するわけですが、金融機関としては抵当権に基づいて差押を申したてて、最終的には裁判所の関与のもとで競売手続きを行い、競売代金を原資に債権回収を図ることになるでしょう。

しかし裁判所関与のもとでの競売には、デメリットがあります。まず競売手続きをふむと、相場よりも低い落札価格で落ち着くことが一般的です。つまり安く買いたたかれるリスクが高いわけです。 借地人側でも立ち退くことが強制されるので、引っ越しなどのタイミングを柔軟に設定できないなど負担も大きくなります。このような事情をふまえると任意売却での最終処分を検討するのが賢明といえます。

地主側への影響について

借地人が破産手続開始決定を受けた場合、全財産を換価することになるので借地人所有の建物や資産などはすべてを喪失することになります。借地人は地主から見れば、安定した収入源を意味します。そこで問題になるのは、借地人の経済的法律的状況の変化がもつ地主への影響の有無です。それでは借地人が破産した場合に想定される状況変化の整理を通じて、地主への影響を検討してみましょう。

彼が破産手続開始決定を受ければ、裁判所主催の競売によるか・あるいは任意売却などを通じて第三者に所有権が移転することになります。競売によっても任意売却によっても、売却代金は残債務の支払いに充当されることになり、融資関連取引は清算されます。 この一連の事象を地主の視点から分析してみると、少なくとも借地人が破産手続開始決定をうけたという重大な事情変更事由が発生している以上、借地契約の解約申し入れをしたいと考えるのは相当に理由のあることです。借地人が破産すれば、土地の上にある建物だけでなく従たる権利として借地権も第三者に移転することになり、借地契約当事者が抜本的にかわってしまうえしょう。

誰が店子になるのかは、契約締結時にも慎重な判断をしているはず。いくら借地人が破産したからといっても、店子がかわってしまうことには地主には重大な利害関係をもっているわけです。 この問題を検討するにあたってカギを握るのは、解約申し入れをするにしても「正当事由」が存在するのか否かです。借地借家法の原則からすると、解約申し入れをするに際しては「正当事由」の立証が必須となります。契約書に解約についての特約条項が記載されていても、賃貸借契約を破棄するに相当する「正当事由」が無い限り地主の請求は裁判上で認められることの見通しは暗いです。 正当事由の判断では、契約当事者の現状を踏まえて正当性は判断されます。

しかしより子細に条件を分析するとかなり具体的状況を踏まえて総合判断されていることがうかがえるでしょう。 裁判例では①地主サイドに当該土地を利用しなければならない必要性があるかどうか、②借地人が破産する前の滞納状況や滞納金額の多寡、③破産手続開始決定後の賃料支払いが見込めるかいなか、④地主が立退料を支払うかどうか、その金額の妥当性などが判断事情となるわけです。 たとえば破産前後の厳しい経済状況では、賃料滞納の慢性化などの病理現象が発生することは容易に想像できます。賃料延滞を長期間にわたり延滞しているような店子であれば、賃貸人サイドから解約申し入れを行い更新拒絶をすることも可能です。

逆に賃料支払いに支障がないようであれば、借地人が破産手続開始決定をうけたことをもって解約申し入れをしたとしても、認められない可能性が否定できません。新規の借地人に難色をしめすようであれば、破産管財人との交渉で借地を含めて建物を地主側が購入するという選択肢もあります。 もっとも地主側としては、新たな借地人に対して承諾を出す過程で交渉する余地はあります。それというのも競売によってであれ、任意売却によってであれ借地権の移転に際しては地主の承諾が法律上の有効条件とされているからです。

借地上の建物を購入した所有者といえども、地主の了解による占有権限がない限り、正当に借地を利用することはできません。新たな借地人としては土地利用のために、承諾に際して承諾料を支払うことになります。地主としては承諾料をもって旧借地人のリスクをカバーすることで対処することが可能になります。ただし地主の請求といえどもそのままみとめられるわけではなく、最終的には借地人から承諾に代わる裁判を申し立てられる可能性はあります。

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